たった三つのボタンだけれど

  • 2018.10.26 Friday
  • 21:50

所用があって高松に帰ってきた。実家の母の病院での検査がちょうどあって、送迎したりあれこれ話をしたり。

やはり、父が亡くなってからまだ半年。その不在の大きさがとてもこたえているようで、せめてもの親孝行と時間いっぱいいろんな

話をする。女同士のおしゃべりって尽きないのですねえ(笑。

母がずっと自作の短歌を書きつけているノートを見せてくれて、すごいねえ、とめくっていたら、最後のページに私が昔作った詩が書きつけてあった。詩誌に投稿して、すいせん詩に掲載してもらった詩だが、その冊子をなくしてしまい、なんとかその詩を調べられないものかと困っていたところだった。なんとなんと!ほんとにうれしかった。母というのはありがたいものでありますね。

 

幼稚園へ通い始めた年の息子とのひとこま。幼稚園へと続く並木の美しさ、なつかしい。

今はボタンにも給食?にも苦労しなくなっただろうけれど、遠くからエールを送っている、わたしもまた、母なのでした。

 

    たった三つのボタンだけれど

 

  たった三つのボタンだけれど

  君は毎朝苦労するよね

  幼稚園の制服はお姉ちゃんのおさがりで

  ひと夏すぎると急に窮屈になった

 

  ボタンをかけている間

  大きなボタンとボタンホールを交互に見較べ

  真剣なまなざしをしている

  かけ違ったらまたやり直そうよ

  

  おかあさんなど 今までいくつのボタンをかけ違えたか

  人生手帳 なんていうのがあったら

  きっとまちがいの×で真っ黒だね

  

  制服を着終えると

  「今日も給食ある?」

  「もちろん」

 

  考えこむように俯く君の手をひいて欅並木を歩いてゆく

  半分過ぎたころ「やっぱり給食全部食べる!」と歩を早める

  たとえコップ袋にパンのかけらが残ってても片目つむってあげよう

  人生4年生の奮闘に敬意を表して

  (×だらけのおかあさんからで悪いけど)

  ちいさなはなまるさしあげます

  

 

二都物語ふたたび  東山魁夷展―本当の「あお」に出会う

  • 2018.10.15 Monday
  • 22:15

JUGEMテーマ:アート・デザイン

 

今回の旅は、この東山魁夷展が主目的。この展覧会を見た友人から、ぜひ見たほうがいいと勧められ、会期終了間際に京都での鑑賞が叶った。
 

 

荷物をロッカーに預け、ゆっくり階段を上って、さあ、と入口を入った途端、目に飛び込んできたのが最初の作品「残照」。これを見た瞬間から何かこみあげてくるものがあって、涙が出てしまって参った。自分でもびっくりしたのだが、あとで図録の説明をよく読んで、これが画家が戦争前後に妻以外の身内を失いどん底にいたときに出会い、そこを抜け出すきっかけとなった一枚であることを知り、絵にこもったものが何かこちらに伝播したのだなあと納得したことだった。

 

そこから昭和36年ごろまでに描かれた「道」や「秋翳」など力のこもった風景画が続く。

 

その次は、北欧を描いた作品。「冬華」の白や「白夜」の青が印象的だったが、なんといってもフィンランドの森と湖を描いた「白夜光」の静けさには深く心打たれた。湖にうっすらとたたえられた光と深い森の静寂。しばらく世界に浸っていた。

 

そして古都を描く、と題し京都を描いた作品の数々や、ドイツ・オーストリアを描いた作品などが続く。「月篁」の月の光の表現や「春雪」のやわらかな雪の感触、「年暮る」では京都の街並みに静かに雪が降りつづく。ドイツ・オーストリアを描いた作品では、緑の鮮やかさが印象に残った。

 

白眉は唐招提寺の障壁画で、モノクロームの作品「黄山暁雲」「桂林月宵」「揚州薫風」からその風景の空気まで漂ってきそうで、ため息をつきながら、作品の世界に心遊ばせた。そしてこちらは彩色された「山雲」の雄渾な世界に目を見張り、足を進めて次の「濤声」を見て息がとまりそうになった。これは絵なんだろうか、何か、そこにほんとうに海が広がっているような気がして、しばらく茫然としてしまった。美しい海の色、今ここで動いているような波。「濤声」にふたたび涙がこぼれそうになった。

 

そのあとの作品にも「白い朝」や「秋思」などすてきな作品があったけれど、障壁画の余韻がずっと続いていた。

 

構成上、東山魁夷展を出てからほかの作家の作品が並んでいるコーナーを通って出口へ向かうのだが、どこからか「あああ、あの青がどこかへいっちゃうから、ここは見ずに早くでよう」って言っている人の声が聞こえてきて、なるほどなあと。

 

会期終了間近とあって、観覧者はとても多かったのだけれど、絵と対峙している間はそれがまったく気にならず、不思議なことに、すごく静かなところで鑑賞したような錯覚すら覚える。どこまでも、静かで透徹した、しかしあたたかな世界が広がっていた。「残照」と「白夜光」と「唐招提寺の障壁画」を間近に見ることができたことに手を合わせて感謝したいような気持になった展覧会だった。

 

現在は東京にて開催中。

二都物語ふたたび  木屋町通、無鄰菴

  • 2018.10.13 Saturday
  • 22:04

宿は河原町三条のあたり。チェックインのあと、夕食をとるため、木屋町通というのかしら、小さな川のほとり、桜並木の下をそぞろ歩きました。

 

 

 

 

 

 

 

途中、書店かな?と足を止めたのは、立誠小学校の跡地(現在、複合施設に生まれ変わるための工事中とのこと)で、工事の間も地域文化を発信するために立誠図書館を開設しているとのこと。中においてある本は京都に関連したもので、すごく面白そうな本がたくさんありました。調べてみたらこの春オープンしたばかりなのですね。

 

夕食のあと、道を戻ると、彦根藩邸跡地なんてのもあって、どこを歩いても歴史の記憶が詰まってますね。

 

翌朝、宿でおいしいおかゆを堪能し(実は今回の旅で一番おいしかったのは、このおかゆでありました)、パラパラ降り始めた雨の中、美術鑑賞前に無鄰菴へ。

 

山縣有朋の京都別邸であった無鄰菴。七代小川治兵衛作の庭を堪能。琵琶湖疎水の水を引き込み滝あり小川あり池あり、珍しい芝生もあれば苔もあり緑が美しい。無鄰会議が行われたという洋館も見学し、母屋で雨の美しい庭を眺めながらお抹茶をいただくうち雨もやみ、庭をゆっくりめぐることができました。

 

 

茶道教室もあるのだとか、こんなところで毎週お茶のお稽古ができたらすてきだろうなあ。

紅葉しかけた木々もあり、風情のあるよいお庭でした。琵琶湖疎水から来たこの水はどこへ流れているのですか?とお尋ねしたら、うちから瓢亭さんへと続いています、とのこと。名前はよく知っている料亭ですが、おお、無鄰菴のお隣だったのですね。

 

雨もあがった岡崎界隈、ゆっくり歩いて「東山魁夷展」が開催されている京都国立近代美術館へと向かいます。

 

 

二都物語ふたたび 神戸「プラド美術館展」

  • 2018.10.12 Friday
  • 18:16

JUGEMテーマ:アート・デザイン

お誘いいただいて、秋の二都物語パート供∈2鵑禄三人、美術館を巡る旅を楽しむ機会に恵まれました。

一日目は兵庫県立美術館で、プラド美術館展。正直に言うと、それほど興味はなかったのだけれど、ベラスケスはやっぱり良かった。

快晴の道を歩いて美術館へ。

 

一枚目、ベラスケスの描いた「ファンマルティネスホントニェスの肖像」。暗い背景、黒い衣装の深い色の中に浮かび上がるのがその人の顔。人間の内面を描きだすベラスケスの筆の見事さ。

 

芸術、知識、神話、宮廷、風景、静物、宗教の各章の分かれた展示。知識の章では、同じ哲学者を違う画家が描いているのを見比べるのが面白かった。神話では、ベラスケスの描いたなんとも不思議な「軍神マルス」。勇ましい戦いの神様というより、そこらへんのくたびれたおじいさんが、昨夜の深酒を悔やんでいるような疲れたご様子。兜とかが立派なだけにその対比に虚をつかれる。でも、これがベラスケスのすごいところなのかも〜。一度見たら絶対忘れられないマルスです。

 

ルーベンスも登場、かなり大きな絵が続く。宮廷の章では、ベラスケスによる「狩猟服姿のフェリペ4世」や「バリョーカスの少年」。ファン・カレーニョ・デ・ミランダの描く「甲冑姿のカルロス2世」とフェリペ4世はうりざね顔に分厚い唇がとてもよく似ている、そばで鑑賞していたおばさま方から「この人たちはもう血族結婚の嵐やろうねえ、そりゃ似た顔になるわねえ」との声あり。う〜ん、歴史は全く知らないけど、ほんとに似てる。アントニオ・デ・ペレーダの「ジェノヴァ救援」も、細部の描写や質感、色彩の美しさが圧倒的だった。

 

風景の章ではいよいよ「王太子バルタサール・カルロス騎馬像」が登場。カルロス王太子4〜5歳頃の肖像とのこと。あどけないながら風格ある王太子の姿と衣服のきらめき、ブルーが美しい背景とあいまって、すてきだった。この王太子16歳(だったかな)で夭折されたのですね。もう35年近く前に見た「ラス・メニーナス」の感動がすこしよみがえってきた。

デニス・ファン・アルスロート描くところの「ブリュッセルのオメガングもしくは鸚鵡の祝祭・職業組合の行列」は、その名の通り、横幅3828センチの大きな絵の中に、行列とそれを見る人たちがすさまじい数描かれていて、この絵の前は鑑賞者が大混雑(笑。ウォーリーを探せ状態の絵は見れば見るほど面白かった。それぞれの職業組合の旗だろうか。様々な旗を持った人に続いて歩く行列が延々と描かれている。かわいい男の子がおばあちゃんに「一番前の列は60人!」と律儀に報告している声が聞こえた。最前列が一番大きく描かれ奥へ行くほど細密になり、窓から乗り出す人たちにいたっては米粒くらいの大きさだ。何人いるか数えた人がいたらぜひ教えてほしい。

 

そのあとの静物画では、ブドウの細密な描写に圧倒される。もいで食べたら甘い果汁が口に広がりそうなほど。

 

見終えた後は、ほーっとため息。絵を鑑賞するのもなかなか体力が要ります。その日のうちに京都へ移動開始!

PR

calendar

S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< November 2018 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

recent trackback

recommend

recommend

recommend

recommend

Paganini: Duos
Paganini: Duos (JUGEMレビュー »)
Niccolo Paganini,Ismo Eskelinen,Pekka Kuusisto

recommend

recommend

Musical Soirée at Ainola
Musical Soirée at Ainola (JUGEMレビュー »)
Jean Sibelius,Heini Kärkkäinen,Pekka Kuusisto

recommend

recommend

Jean Sibelius: Violin Concerto; Karelia Suite; Belshazzar's Feast
Jean Sibelius: Violin Concerto; Karelia Suite; Belshazzar's Feast (JUGEMレビュー »)
Jean Sibelius,Leif Segerstam,Helsinki Philharmonic Orchestra,Pekka Kuusisto

recommend

recommend

Bach: Violin Concertos
Bach: Violin Concertos (JUGEMレビュー »)
Johann Sebastian Bach, Tapiola Sinfonietta, Jaakko Kuusisto, Pekka Kuusisto

recommend

recommend

recommend

Sibelius: Works for Violin & Orchestra [Hybrid SACD]
Sibelius: Works for Violin & Orchestra [Hybrid SACD] (JUGEMレビュー »)
Jean Sibelius,Pekka Kuusisto,Tapiola Sinfonietta

recommend

Prokofiev;Violin Sonatas
Prokofiev;Violin Sonatas (JUGEMレビュー »)
Sergey Prokofiev, Ilkka Paananen, Raija Kerppo, Jaakko Kuusisto, Pekka Kuusisto

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM