芭蕉の花と若冲と

  • 2018.05.23 Wednesday
  • 15:09

芭蕉の花というのを、初めて見た。

 

山陰は茶道が盛んなようで和菓子屋さんも多い。先日、抹茶ではなくて煎茶を点てる煎茶道のお点前を初めて拝見する機会があった。水車の板に載せられたお道具、お香立てもあり、一本の香がちょうどお点前が終わるころに尽きるようになっていた。床の間には、書が掛けてあり、花は芭蕉の花が横たわるように飾られている。大きな実のようなエキゾチックな風貌だったけれど、活け方がすてきでその場にとてもマッチしていた。水車の板の上には、なんとも可憐な姫沙羅も活けられていて、その対比も面白い。

 芭蕉の花 

 

 

 

 

 

 

 

 (芭蕉の花)
 

芭蕉といえば、と思い出したのが相国寺の承天閣美術館で見た若冲の「月夜芭蕉図」。

 

img_4.jpg

 

この絵の前に立ったときに感じた、なんとも言えないし〜んとした静けさを思い出した。

月の持ついささか寂しい感じと白々とした月光に照らされるあたたかさの両方を感じ、絵の世界に吸い込まれてしまいそうで、しばらく絵の前から動けなかった。芭蕉ってなんとなく南国風で風情なんてあるのかなあと思っていた認識がすっかりくつがえされた。

あの芭蕉の、花が、これなんだなあ。これまで、月の満ち欠けなどほとんど心をとめずに生きてきたけれど、電気のない時代、月夜の美しさはどれほど心に沁み込んだことだろう。

 

澤田瞳子の小説『若冲』にも、この芭蕉が出てくるシーンがある。はっとするほど効果的に登場し、とても心に残っている。

 

芭蕉の花から、様々な思いを巡らせる五月の楽しみ、風流とはかけ離れたばたばたの日々にしばしうるおいをいただきました。

評価:
澤田 瞳子
文藝春秋
¥ 1,728
(2015-04-22)

『SOME OTHER TIME』BILL EVANS

  • 2018.05.14 Monday
  • 22:04

JUGEMテーマ:音楽

 

JAZZのことはさっぱり詳しくないのですが、ビル・エヴァンスの幻の録音がすごいと友人が聴かせてくれました。このアルバム、躍動感あふれる演奏がなんともいえず素敵、聴いててワクワクします。

 

最初にビル・エヴァンスの演奏に接したのは、20歳くらいの時。スウェーデンの歌姫モニカ・セッテルンドの『Waltz for Debby』を聴いたのが初めてでした。これがとても好きで繰り返し聴いていました。モニカのしっとりした哀調を帯びた声と、ビル・エヴァンスのリリカルでなおかつ情感あふれるピアノ。タイトル曲にもなっている『Some Other Time』もいつの間にか耳になじんでいました。

 

 

しかし、ふだんはついついCD聴きながらあれこれしちゃうもので(今も……、笑)ある夜、じっくり聴いてみようとこのアルバムに耳を傾けていたときのこと、最後に『Some Other Time』が始まった瞬間ぞぞぞぞっとしました。なんでしょう、このイントロの美しさ。この上ない詩情。ビル・エヴァンスのピアノが雨の雫のように、静かにこぼれて、エディ・ゴメスとジャック・ディジョネットの紡ぐ音が、宝物をくるむように優しく寄り添う……。聴いているうちに涙がこぼれてとまんなくなりました。年とって涙腺ゆるみがちではありますがCD聴いてて涙が出るなんて久しぶり。50年前の演奏をこうやって聴けるしあわせを思ったことでした。

で、びっくりしたのですが、これってバーンスタインが作った曲なのですね。知らなかった。

Youtubeには、バーンスタイン自身がピアノを弾いている『Some Other Time』がありました。途中バーンスタイン自身も歌ってます。声、渋いなあ。

 

実は4月に父を亡くし、ちょっとめげています。陽気で音楽好きだった父との思い出はいろいろあって、思い出すとその不在がよけいに身にしみてきたりします。

 

葬儀から戻ってしばらく、この曲をぼーっと聴いていました。不思議に心が安らぐのです。以前、大阪のシンフォニーホールでのコンサートに両親を招待したとき、環状線の大阪駅で父とはぐれた話は以前に書いたかな。さんざん探してへとへとになり、仕方なくシンフォニーホールに行ったら、ちゃっかり先にコンサートホールに到着していた父。『Some Other Time』またいつかどこかで「なあんだ、先に来てたのね」と笑って言えるといいなと思うのです。

  • 2018.03.12 Monday
  • 22:05

JUGEMテーマ:日記・一般

積雪の多かった鳥取の冬、ようやく本格的に春らしくなってきました。

晴れ空に誘われて、ちょっと自転車で川沿いへ。

川土手には、菜花、土筆、オオイヌノフグリ!

春霞か、山脈はおぼろげに。

 

IMG_2226.JPG

菜花は、さっそく食卓でお吸い物に。

IMG_2244.JPG

春霞ですねえ。PM2.5だかが飛んでないとよいのですけど。

IMG_2227.JPG

 

『恋しぐれ』(葉室麟)と呉春の『白梅図屏風』

  • 2018.03.05 Monday
  • 22:13

JUGEMテーマ:読書

毎月テーマ本を決め数人の仲間と読書会のようなものを楽しんでいます。葉室作品を何か一冊読みましょう、ということになったのが昨年の秋でした。『蜩ノ記』や『銀漢の譜』『いのちなりけり』など何冊か読んでいたけれど、せっかくだからこの機会に何か読もうと手にしたのが『恋しぐれ』、表紙の絵にとても心惹かれたのです。

 

それまで読んだ武士ものとは一線を画し、柔らかな印象。与謝蕪村を中心に円山応挙や上田秋成、蕪村の弟子月渓(呉春)などが登場し、様々な切り口で語られる話が繋がって、ひとつ大きな物語となります。蕪村のあたたかみや大きさ、円山応挙のまっすぐな明るさ、ちょっと皮肉屋の上田秋成。ほんとうにこんな風な会話が繰り広げられていたのだろうなあと想像すると楽しい。

蕪村の五十近い年齢差をも超える一途な恋、月渓の哀しい恋、そのほかにも様々な人の人生や恋情が交錯、ほろ苦く切ない恋もあり、命を落とすほどの恋もあり。どのエピソードにも作者の温かいまなざしが感じられます。

師匠である蕪村の辞世の句『白梅のあくる夜ばかりとなりにけり』をもとに月渓(呉春)が描きあげたのが『白梅図屏風』。表紙絵はその絵の一部だったのでした。

 

⇒『白梅図屏風』について

 

読後、この絵はどこに所蔵されているのか調べていたところ、逸翁美術館で二月に展示されることを知り、今回呉春の白梅に逢ってきました。実に味わい深く清々しい、吸い込まれてしまいそうな絵でした。

藍で染められた布のグラデーションが絶妙で、その布の色がそのまま紺碧の空の色になり、そこに描かれたきらめく星のような可憐な白梅がすごく切ない。濃く薄く描かれた枝々が奥行き感を見事に表現しています。

 

全体に漂う静謐で温かい空気感。蕪村の『夜色楼台図』の醸し出すものと共通の世界がそこに在りました。呉春が師匠の蕪村をどれほど慕っていたか、絵がそれを語っているように感じました。

 

その真向かいには応挙の『雪松図屏風』の習作である『雪中松図屏風』が展示されていて、その堂々とした明るい存在感と、どこまでも静かで奥行きのある呉春の絵の対照が実に際立っていて、いい展示だなあと。

 

 

厳しい冬が明けかけたころにほころびる梅の花。いい花ですね。

 

 

評価:
葉室 麟
文藝春秋
¥ 19,051
(2011-02)

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