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Phoebe's music life
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七夕

菅原克己全詩集
菅原克己全詩集

今年は7が三つ並びの七夕でしたね。携帯に並んだ「070707」が美しかった(笑。以前もちょこっと書きましたが、毎年七夕になると、菅原克己の詩『ブラザー軒』を読みたくなります。ちょいと長いですが。

     『ブラザー軒』

    東一番丁、
    ブラザー軒。
    硝子簾がキラキラ波うち、
    あたりいちめん氷を噛む音。
    死んだおやじが入ってくる。
    死んだ妹つれて
    氷水喰べに、
    ぼくのわきへ。
    色あせたメリンスの着物。
    おできいっぱいつけた妹。
    ミルクセーキの音に、
    びっくりしながら
    細い脛だして
    椅子にずり上がる。
    外は濃藍色のたなばたの夜。
    肥ったおやじは
    小さい妹をながめ、
    満足気に氷を噛み、
    ひげを拭く。
    妹は匙ですくう
    白い氷のかけら。
    ぼくも噛む。
    白い氷のかけら。
    ふたりには声がない。
    ふたりにはぼくが見えない。
    おやじはひげを拭く。
    妹は氷をこぼす。
    簾はキラキラ、
    風鈴の音、
    あたりいちめん氷を噛む音。
    死者ふたり、
    つれだって帰る、
    ぼくの前を。
    小さい妹がさきに立ち、
    おやじはゆったりと。
    東一番丁、
    ブラザー軒。
    たなばたの夜。
    キラキラ波うつ
    硝子簾の向うの闇に。


どこまでも透明で幻想的な、たなばたの夜。静かに氷を噛む音がいつのまにか部屋いっぱいに満ちてくるような。

28年ほど前(年ばれちゃうけど)高校の軽音楽部でMeditationというバンドのキーボードをやってました。そのバンドの文化祭での演奏をメンバーのお一人がきれいにリマスターしてCDに納めてくれたものを最近いただき、ほんと懐かしさのあまりひっくり返りそうになりました。失敗した記憶が鮮明なのでこわごわ再生したのですが、想像以上に演奏も音質もよく、聴いているとつい昨日のことのように思えるほどでした。実際には長い長い時間が流れてしまったわけですが。

学年がひとつ上だった女性メンバー3人が抜けた次の年の文化祭の演奏もはいっていて、そこでキーボードとヴォーカルを担当していたMくんの声を28年ぶりに聴いていたところへ、CDを作ってくれた友人から届いたのが、そのMくんが昨年亡くなっていたという知らせ。ほんとに驚きました。

違うバンドだったのであまり話した記憶はないのですが、いつもにこにこしているやさしい雰囲気の人だったなぁ。当時、わたしが学校の冊子か何かに書いた「新しい時代のしっかりした風に」という(タイトルしか覚えてない^^;)文章を「とてもよかったですよ」と言ってくれたときの記憶が蘇ってきました。

遺されたご家族のことを思うとなんともいえない気持ちだったのですが、この詩を読みながら、硝子簾をくぐった彼が子どもたちと並んで氷水を喰べているところを想像していると、すこし気持ちが静かになりました。彦星と織姫も、死者と生者も、天の河を自由に往来して逢瀬を楽しめる七夕だったらすてきだなぁ、と思いつつ。

ブラザー軒のある街、仙台の七夕は8月なんですねぇ。一度行ってみたい街ではあります。
| 22:57 | comments(7) | trackbacks(0) | phoebe

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COMMENT
七夕は雨でした。
天の川もみれませんでした。
何かの折に、思い出がよみがえって来たり
その人の顔や言葉を思い出すことあります。

高校の頃、隣のくら
Yuri | 2007/07/12 10:15 AM
ごめんなさい。マウスが反応してしまい
途中になりました。
で、隣のクラスの男の子に辞書を貸し
あまり話したことない子で
数年後事故死したんだけど
そのとき交わした言葉とか笑顔を
思い出す事ありました。
yuri | 2007/07/12 10:20 AM
Yuriさん、七夕は雨でしたか〜。九州の水害大変ですね。

思い出って、ほんとに写真かなにかで切り取ったように、そこだけ覚えてるってことが多いですよね。
死はみんなに平等におとずれるものだけれど、あまりに短い人生はかなしいですね。忘れずにいることが、一番よい弔いになるのかなぁ、と思います。
phoebe | 2007/07/12 10:16 PM
『ブラザー軒』…、哀しんだけれど、ほのぼのした、不思議な詩ですね。どこか、辻征夫さんの詩の醸す雰囲気にも似ているような気がします。

高校時代、バンド、やってたんだ。^^ カッコいいですナ。そして、Mくんの訃報…。でも、Mくんとの思い出は、永遠でございますゾ。phoebeさんが、彼を忘れない限り、ね。(^^)v

また、ひとつ、歳をとってしまいました。TT
遊牧亭 | 2007/07/12 10:49 PM
遊牧亭師匠、七夕がお誕生日って、なんだかうらやましいです〜。おめでとうございました。

師匠は卓球部だったんですね(^^)。高校時代、このバンドをやってたときは、ほんとすごく楽しかったです。自分のことをすこしでも思い出してくれる人がいれば、人は幸せですねぇ。

菅原さんと辻さん、そういえばなんとなく底に流れているものが同じですよね。
phoebe | 2007/07/13 10:46 AM
 谷中に全生庵という禅寺があるのですが、そこで毎年桜の頃、「げんげ忌」というのが催されます。菅原克己さんの忌日です。
 いつか、そこで辻征夫さんが菅原さんに関するささやかな講演をされました。エッセイと同じような、飄々とした、しかし一本芯が通った語り口。すてきな講演でしたね。
 その後は、谷中で花見になるのです。静かに佇んでおられた辻さんに、私は(勇を鼓して)話し掛け、詩の新作を楽しみにしています、と申し上げました。すると、
 「詩ですか……詩は、疲れますからねえ」
 と、ゆっくりおっしゃいました。
 いまにして、思えば、もう相当病状が進んでおられたのでしょうか。なんだか、残酷なお願いをしたのかなと、いまも悔やまれます。
 その席に、アーサー・ビナードさんもおられました。菅原さんの詩を読んで感銘を受け、日本語で詩作を始めたのだそうです。米人ながら日本語で書く彼の詩は、菅原さんはもちろん、辻さんや木下さんにも通ずるところがあって、私は大好きです。おすすめです(お連れ合いさんが木坂涼さん)
鳴樹 | 2007/07/13 3:42 PM
鳴樹さん、ありがとうございます。辻さんの講演、聞きたかったなぁ。
>「詩ですか……詩は、疲れますからねえ」
という言葉、重いですね。辻さんの詩って、けして大仰じゃないし、ときにユーモラスだったりするんだけど、ほんとに身を削って書いてるのがひしひし伝わってきますものね。

アーサー・ビナードさんの詩作のきっかけが菅原さんとは!彼の詩もちょっとしか知りませんが、よいなぁと感じていました。

たまたま自分のアンテナに引っかかった好きな詩を気儘に読んでいるつもりでしたが、木下さんといい、どこか底のほうに流れている抒情詩の系譜やつながりといったものがあるんですね。
phoebe | 2007/07/13 5:11 PM
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