Blue lagoon

Phoebe's music life
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『パリ、ジュテーム』

なかなか晴れず光合成不足のphoebeです。地震、台風、いろいろ大変な昨今、天気の文句いっていてはいけませんね。それにしても目と鼻の先で殺人事件が起こるわ、ダニは発生するわ、散々な梅雨となってます(TT)。

暑くなると、クラシック聴くのはしんどく、もっぱらジャズの日々。あとはクーラーの効いた映画館。というわけで、先週「パリジュテーム」を見てきました。18人の監督がパリの地区を舞台に綴る、多彩なパリの表情と愛の形、おなかいっぱい楽しませてもらいました。

→公式HP

遠い昔、わたしも女の子らしく、パリに憧れたものですが、そういった憧れを持ってパリに住む人におこるパリ症候群まであるのだとか。それくらい人を魅了してやまない街なんですね。

一番、パリらしくてっておしゃれだなぁ、と思ったのは‘カルチェラタン’。離婚調停のために妻に会いにきた初老のアメリカ人ベン(妊娠3カ月の若い愛人がいる)と奥さんのジーナ(こちらには若いサイクリストの恋人あり)との会話がほんとにしゃれていて、ビシバシとスパイスが効いてます。脚本を書いているのは、ジーナを演じるジーナ・ローランズ、その人だそう。HPを見ていてわかったんですが、わわ、この女優さん「グローリア」(オリジナル・1980年)に出てたんだ!当時、映画館で観ました。骨太のグローリアがほんとかっこよくて、いい映画だったなぁ。

南アフリカ出身のオリヴァー・シュミッツ監督による19区‘お祭り広場’は、切なかった。通りがかりの少年に刺され、瀕死状態のアフリカからの移民ハッサンと、応急処置をする若い医学生のソフィ。ソフィを見て、かつて一目ぼれしてお茶に誘った女性であることを思い出し、薄れゆく意識の中でソフィーにコーヒーを飲もうと言うハッサン。最後にソフィが震える手に持った二つのコーヒーカップのクローズアップが忘れがたいです。同じく、ベビーシッターをする移民女性を描いた‘16区から遠く離れて’も、ほろ苦い。

広島出身の諏訪敦彦監督の‘ヴィクトワール広場’は、ジュリエット・ビノシュの印象的な表情と濡れた石畳が幻想的でした。

でもなんといってもよかったのは、ラスト、アレクサンダー・ペイン監督の‘14区’。彼は『アバウト・シュミット』や『サイドウェイ』の監督さんだったのですね。14区は、かつて芸術家が多く住んだモンパルナス地区だそうです。

デンヴァーで郵便配達するキャロルは、お金を貯め、フランス語を習い、憧れのパリへやってきます。自由気儘なひとり旅。でも、食事をしても、何かを眺めても「きれいだね」と言ってそれを分かち合える人がそばにいないことに、味気なさを覚える彼女。

全編、旅の感想文という形で、彼女のナレーションが流れます。その中には「ジャン=ポール・サルトルとシモン・ボリバルのお墓。2人はとても有名なフランスの作家で、深く愛し合っていたので、一緒に埋葬されたとか」なんていう一節が挟み込まれていて、笑いを誘います。あと、一生懸命フランス語で訪ねるキャロルに、店員さんが英語でこたえるという少々皮肉ながらユーモラスな描き方、この監督の味ですね(笑。そして、極上のラストが待っています。

14区にある小さい美しい公園を見つけ、そのベンチでひとりサンドイッチを食べている彼女を訪れる特別な瞬間。自分が見知らぬ異国で、ひとりでいるという感覚。(エトランゼなんて言葉を久しぶりに思い出した)。そして、その瞬間から彼女はパリを愛し始め、パリもまた彼女を愛しはじめる・・・・・・。
ふと、自分の経験も重なって、ああ、この感じなんとなくわかるなぁと。しみじみしたものが胸の中にひろがっていくいいエンディングでした。

この14区の公園、モンスーリ公園なのだそうです。モンスーリ公園といえば、わたしにとっては、ジャック・プレヴェールの『楽園』。

久しぶりにノートやら詩集をひっくり返したら、違う訳が4つも出てきました。フランス語がさっぱりわからないのでなんなんですが、タイトルも違えば、抱きしめたのかキスしたのか、そのあたりもはっきりわかんないなぁ(笑。まぁ、どっちでもいいですね、幸せならば。

一応4つ全部、記しておきます。どの訳が一番好きか、こそっと教えてください(笑。
ジャック・プレヴェール(1900-1977)

楽園  Le jardin

何千年かかっても
まだ十分には
言い尽くせない
君がぼくを抱きしめ
ぼくが君を抱きしめた
その束の間の永遠の一瞬。
一つの星の地球
その地球の上の
パリの町
パリのモンスーリ公園の
冬の陽の射すある朝のこと。
(たぶん 小海英ニ訳「現代フランス詩集」)

楽園

何千年かかっても
語りつくせるものでない
きみがぼくにくちづけし
ぼくがきみにくちづけた
 あの永遠のひと時を
それはある日の朝のこと
冬の陽ざしにつつまれて
モンスリ公園の中だった
 そこはパリの町の中
 パリは地球の上の町
地球はひとつのお星さま
(平田文也訳 『プレヴェール詩集』ほるぷ出版)



千年万年の年月も
あの永遠の一瞬を
語るには
短すぎる
きみはぼくにくちづけした
ぼくはきみにくちづけした
あの朝 冬の光のなか
パリのモンスリ公園
パリは
地球の上
地球は一つの惑星。
(小笠原豊樹 訳 『プレヴェール詩集』マガジンハウス)



何千年かかったって
とうていだめ
言いつくせるものじゃない
あの永遠のほんの一瞬
あのきみがぼくを抱いた
あのぼくがきみを抱いた
冬の光が射していたあの朝
パリのモンスリ公園で
パリで
地上で
遊星の地球の上で。
(大岡信訳 『フランス詩集』白鳳社)

映画 | 16:17 | comments(8) | trackbacks(0) | phoebe

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COMMENT
 こういう風に、何種類もの訳を対象するって、面白いですね。何年か前、その頃勤めていた会社の同僚が、「マザー・グース」の訳を何種か集めた本を企画していました。残念ながら、実現はしなかったけど……。
 個人的には、「ルバイヤット」の訳を集めてみたいです。
 さて、4種の訳、難しいですね。でも私は最初の小海訳をとります。なぜかというに、他の訳は(原文を知りませんが、たぶん)最後の「地球は惑星」の、いわば決めのせりふの効果を、充分には出せていない気がするのです。原詩の語順には忠実なんでしょうけれども。
 それなら、最後の「惑星」の行の効果を充分に知った上で、あえて語順にこだわらない、「意訳」をした小海訳が、詩を訳す態度としては、一番かなと思うのです。
 訳詩は創作、といわれる所以です。
鳴樹 | 2007/07/20 3:16 AM
鳴樹さん、ご感想ありがとうございます。たまたま今回調べていたら、4つも訳があったので、面白いなぁと思ってあらためて並べて読み直してみました。

実は、わたしも一番最初の訳が一番好きで、好きな順番に並べております(笑。一番最初に読んだ訳がこれだったということもあると思うのですが、とても自然なやわらかい幸福感が言葉の間からたちあがってきてるのが、小海さんのよいところですよね。ほかのを読むと、ああ、順番が違ってるんだろうなぁ、と思うのですが、それが生きてると、わたしも思います。

言葉をおきかえるって、まず不可能なことかもしれないけれど、その労のおかげで、こうやって作品をしることもできますね。でも、ほんとに(詩はとくに)翻訳が大変そう。原語で読む能力があったらなぁ、とつくづく思います。
phoebe | 2007/07/20 12:07 PM
『パリ、ジュテーム』は、気になっていた映画だったのですが、時期を逃してしまいまして…。「お祭り広場」と「14区」がよさそうですね。2作品とも、見終わった後、余韻が残りそうな印象を持ちました。DVDになったら、ぜひ観てみようと思っています。

「楽園」は、私も小海英二さんの訳が好きです。訳というのは、やぱり訳す方のセンスが問われますよね。そういう意味では、創作といえるのかもしれません。

遊牧亭 | 2007/07/21 1:43 PM
遊牧亭師匠、DVDになりましたら、ぜひご覧ください。ちょっと長い作品だけど、ひとつひとつがけっこう面白いですよ。14区はしばらく余韻を楽しめると思います。

師匠も、小海さんの訳がお好きですか〜。
意味をどう汲み取って、再構築するか……。詩の翻訳となると、たしかに創作の世界ですね。
phoebe | 2007/07/21 10:37 PM
はじめまして.偶然こちらのブログ拝見しました.
私も『パリ、ジュテーム』を映画館でみました.
その中でも(同じく)「お祭り広場」にグッときました.
そしてなんといっても14区は最高に素敵でした!
繊細な気持ちや行動の描写がとにかくうまいなあと.
あさって発売の『パリ、ジュテーム』DVDが楽しみです.
bookcafe | 2007/10/22 9:40 PM
bookcafeさん、ご来訪&コメントありがとうございます!
『パリ、ジュテーム』いい映画でしたね。
14区の監督さん、ほんとふとした瞬間の心の動きを繊細にとらえてますよね。主人公の気持ちに、こちらが共振するような瞬間がありました。
おお、DVDが出るのですね。見てみたいなぁ。
パリ症候群がちょっと怖いけど、やはり一度は行ってみたい街です(^^)
phoebe | 2007/10/23 1:32 PM
はじめまして!
ある方からの問い合わせで、モンソー公園にまつわるこの詩の作者を調べていました。
プレヴェールだと知ったばかりでなく、四つも訳があるとは驚きました。
勉強になりました。ありがとうございます!
ドラゴンタトゥーのプー | 2012/10/21 12:45 PM
ドラゴンタトゥーのプーさま、ありがとうございます。コメントいただいたおかげで、自分で書いた記事ながら、えらく懐かしくしみじみ読み返してしまいましたw。すこしでもお役に立てたならば、うれしいです!
phoebe | 2012/10/21 11:08 PM
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