『恋に落ちたシェイクスピア』

  • 2018.10.02 Tuesday
  • 21:17

まずは映画の再鑑賞。この映画『恋に落ちたシェイクスピア』は、確かDVDでみてすごく良い映画だったという記憶が残っていた。あるきっかけからあらためて観ることに。スピード感あふれる冒頭のシーンから、すぐさま物語の中へ引き込まれてしまった。このスピード感と躍動感が最後まで続き、ずっとドキドキわくわく。ジョン・マッデン監督、1998年の作品。アカデミー賞作品賞はじめ、様々な賞を獲っている。いやはや20年も前だったのか〜。

 

スランプに陥り創作に苦しむ劇作家シェイクスピアと、演劇と詩をこよなく愛する美しい深窓の令嬢ヴァイオラの短くて激しい恋の物語。と言葉にしてみるとなんだか‘くさい’のだが、二人が恋に落ちていく様は、ほんとに躍動感にあふれていてみずみずしい。グゥイネス・バルトロウ演じるヴァイオラの透明感のある美しさ!男装してトマス・ケントとなるときも、とてもチャーミングだ。

そして、この恋に触発されてシェイクスピアの筆は冴えにさえ「ロミオとジュリエット」が生まれ、初演にこぎつける。それは同時に恋の終わりでもある。現実の恋と、劇中の恋が螺旋階段のように絡み合いながら疾走していくにつれ、観ているこちらの切なさのスピードもどんどんあがるわけで。映像の美しさもあいまって、すっかりシェイクスピアの時代の世界にはまりこんでしまう。

豪華な俳優陣の達者な演技もすばらしい。ヘンズローを演じるジェフリー・ラッシュ(この人見ると、なんとなく橋爪功さんを思い出す)、ヴァイオラの婚約者の怒りっぽいけど、ちょっととんまなウェセックス卿を演じるコリン・ファースも憎めない感じがとてもいいし、      ベン・アフレックやルパート・エヴァレットといった私好みの役者さんたちもすてきだし。

 

しかしなんといっても、ジュディ・デンチ演じるエリザベス女王は圧巻〜〜〜!物事を見通す力、見事な采配、存在感そのものがすごくて、最後のシーンでも忘れられない印象を残す。そしてもう一人、ヴァイオラの乳母を演じるイメルダ・スタウントン、この人がまたチャーミング。シェイクスピアがお嬢様のところへ忍んで来ているのに気付いたとき、扉の前に椅子を置いて夜通し見張り役をするところなんか、ほんとに楽しい。コメディの要素も満点で笑ったり泣いたり切なくなったりしながら、あっという間に見終えてしまった。

 

「ロミオとジュリエット」の初演のあと、切ない恋心を抱きながらも新天地へと向かうヴァイオラ、そしてヴァイオラを思いながら次作の十二夜を書き始めるシェイクスピア。

薔薇の花でいえば七分咲きの美しさ、みずみずしさと甘やかさに彩られたすてきな映画だった。

 

劇中、シェイクスピアがヴァイオラにソネットを捧げる美しいシーンが。あの有名な18番のソネットだ。さっそく本棚からソネット集や、アンソロジーをごそごそと探し出して読んでみた。映画の余韻のせいかぎゅっと胸が締めつけられる。再鑑賞、よいものですね。

 

 君を夏の日にたとえようか。

 いや、君のほうがずっと美しく、おだやかだ。

 荒々しい風は五月のいじらしい蕾をいじめるし、

 なによりも夏はあまりにもあっけなく去っていく。

 時に天なる瞳はあまりに暑く輝き、

 かと思うとその黄金の顔はしばしば曇る。

 どんなに美しいものもいつかその美をはぎ取られるのが宿命、

 偶然によるか、自然の摂理によるかの違いはあっても。

 でも、君の永遠の夏を色あせたりはさせない、

 もちろん君の美しさはいつまでも君のものだ、

 まして死神に君がその影の中でさまよっているなんて

 自慢話をさせてたまるか、

 永遠の詩の中で君は時そのものへと熟しているのだから。

  ひとが息をし、目がものを見るかぎり、

  この詩は生き、君にいのちを与えつづける。

                 (戸城宏之 訳)

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