JUGEMテーマ:音楽
昨年聴いてすっかり魅了された宮田大さんのチェロ。昨年は聴けなくて残念だった観音寺ハイスタッフホールでのチェロ・リサイタル、今年は聴くことができた。高松からだとJRの普通列車だと1時間半、当日他の予定が入ったためJRは無理で、こりゃ自力で運転していくしかないと腹を決め(あまり運転は得意ではないが)高速を使い1時間ちょっとで到着!
昨年は、このハイスタッフホールでCDの録音もされたとのこと。本当に音響がとてもいいホールで、大きさも程よくて、実に落ち着いて鑑賞できる。もうちょっと近かったらしょっちゅう通うのだけど。今回は、新しいアルバム『VOCE』からの曲8曲が前半。ちょっと時間が長いためトークではトイレの心配までしてくださる。ハイスタッフホールはトイレもたくさんあって素晴らしい。先日ベルリンフィルを聴いた香川県民ホール(レクザムホール)は、音はいいが、トイレが(涙。3階席にある女性用トイレはわずか個室が3つ。そのうち二つが和式なのだ。全国でも高齢化率の高い四国。これだけはなんとかならないものかと行くたびに思う。
あ、話がそれました。宮田さんの素晴らしいチェロの音色。ことに幽けき音がなんとも美しく響くのが心地よかった。繊細な音からダイナミックな音までがホールに響きわたる。新しいアルバム『VOCE』(イタリア語で声という意味)というタイトルがまさしくぴったりの歌心に満ち満ちた多彩で素晴らしい演奏を堪能させていただいた。昨年、宮田さん密着のテレビ番組で『EARTH』という曲の演奏が放映され、客席で聴いておられた作曲者の方が泣いてしまったとおっしゃっていた。私もテレビの前で涙が出てしまい、今回、その曲をリサイタルで聴くことができほんとうに嬉しい。宮田さんが「語るようなピアノ」と表現していたジュリアン・ジェルネさんのピアノも、とっても瑞々しく歌にぴたりと合わせて流れる水の煌めきのように素敵だった。
また来年もこのホールでの演奏が決まっているとのこと(2024年10月6日)。楽しみです。 『VOCE』を早速会場で購入して、サインもいただいた。宮田さんもジュリアンさんも実ににこやかに対応してくださる。サイン後写真OKですよ、とのことで、お二人の横顔を、パチリ。帰路は高速を使わず高松までCDを聴きながら充ち足りた気持ちで1時間半のドライブ。冬の夜、暖炉(ないけど)の前で静かに耳を傾けたいような心があたたかくなる素敵なアルバム。山道の運転も怖くなかったのは音楽のおかげかな🎵
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JUGEMテーマ:エンターテイメント
長い話になる。ええと、古川雄大くん。最初はNHKの朝ドラでミュージックティーチャーとして拝見。その時の特番で「船頭小唄」を歌っているのを聴いて、この人の歌、また聴いてみたいなあなどと淡く思っておりました。
1年半前、今の職場に勤めるようになった時、同僚のM師匠とロンドンで観た「オペラ座の怪人」の話をしたことからDVDを貸し借りするようになり、そのM師匠が古川くんの大ファンで「エリザベート」を観に行くと言うので、巷で話題になっているし一度観てみるのも悪くなかろうと一緒に出かけたのでありました。その時は全てが初めてだったので、そこまで深く作品に入ることができず(いささか、宝塚テイストを苦手としているのもあり)にいたのだけれど、古川トートの「エリザベート〜〜🎶」の柔らかい声が深く心に刻まれたのが昨年暮れ。その後、M師匠は古川くんが出ているミュージカルのDVDやら色々貸してくれて、それらを観るうち『モーツアルト』の中の『僕こそ音楽』の歌唱や、「黒執事」のシリーズにハマってしまった。ことに「黒執事」は原作を知らなかったので、悪魔だの死神だの出てきて、なんじゃこりゃ?状態だったけど、とにかく古川くんの歌がいい。尚且つ、こんなに色っぽく悪魔っぽい人間?はなかなかいない。立ち姿は美しいし、ダンスもキレキレ。ついには原作の漫画もメルカリで全巻揃えて夜な夜な読み耽るという、学生時代以来の懐かしき楽しさが蘇ったのでありました。結構ダークなところもあるのだけど、イギリスのヴィクトリア女王の時代という設定がたまらないのであります。
ちょうどその頃通っていた接骨院の先生が「〇〇さん、推しは大事よ、車椅子のおばあさんがヨン様にハマって自力で歩けるようになり、ついにはロケ地ツアーに行ったんだから」と力説されるのを聞いて、これからの残りの人生に必要なものは推し活ではないかと思ったのがきっかけだったか、はたまたM師匠の薫陶の成果か、ある日気づいたら、沼に足を突っ込んでおりました(笑。M師匠も最初からハマったわけではなく、じわじわと沼落ちなさったとのこと。弟子としては正しい沼入り道?を踏襲しているわけです。
まずはとにかく歌が聴きたかったので「The Greatest Concert vol.?」のBlu-ray Discを購入し、鑑賞。ミュージカルの歴史を追いながら、ダンスと歌で構成されている一部がすごく良い!Pippinからの『Coner of the Sky』も良かったし、レ・ミゼラブルから『On my own』には大感動。何度聴いても涙が出てしまう。最後の方、歌っている表情のアップを見ていると、ああ、きれいな人だなあと。もちろん姿形もだけれど眼差しがね、まっすぐできれい。なんかそういう生き方をしている人なのだろうなあと感じたのでした。一部のラスト、私も大好きなDear Evan Hansenから『You Will be Found』もすばらしい!アンサンブルの方々の力強い声が加わって盛り上がる。エリザベートから『愛と死の輪舞』もあって、今回この映像を観て曲の魅力に気付かされた。第二部では「黒執事」からのナンバーや『時は来た』や『サンセット大通り』『僕こそ音楽』も熱唱。『時は来た』の後のトークで体が攣ったという言葉を聞いて歌うって本当に大変なことなんだなと。
M師匠によると、古川くんの歌はずっと進化を続けているとのこと。確かにYouTubeで最初にエリザベートのルドルフ役をした時の歌声を聴くと、進化がすごい。そういうひたむきな一生懸命さが心に届いてグッとくるのかも。少し哀愁もあり甘さもあり、しかし芯に強い意志と情熱を感じる、そんな声でありますね。
そのようにストイックでありながら、なんだかクスッと笑わせてくれるお人柄がまた嬉しい。「大奥」の瀧山役もいい味を出てましたね。M師匠の沼っぷりに較べると、私はまだ脛のあたりくらいのつかり方ではありますが、これからも沼道?を深めていきたいと思うと同時に、大好きな『RENT』や『In to the Woods』『オペラ座の怪人』なんぞは繰り返し観てきたけど、もっと他のいろんなミュージカルも観て世界を広げたいなあと思うこの頃です。
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JUGEMテーマ:音楽
ベルリン・フィルが高松に来る、なんと57年ぶりらしい。っていうか57年前に来てた?それがすごい。
高松公演が発表になってから、ずっと楽しみにしていたこの日。期せずして、ウィーン・フィルも聴けることになったから、なんと一週間たらずの間に世界の双肩オーケストラを、聴けるという僥倖🎵こんなこと、一生に一回しかないよね、たぶん。
普通に朝ごはん食べて、仕事して、帰ってちょっと寝て(ウィーンフィルの時の反省がありますからね)、晩御飯作って、それからベルリン・フィルを聴きに行けるというこの状況がなんか信じられない(笑。
今回の会場レクザムホール(香川県県民ホール)大ホールは音がよくて(ちょっと響きすぎるくらいかもしれない)3階の一番後ろの席でも全くほんとに全く問題なくベルリンフィルの音を全身に浴びて来た。こうやって続けて聴くと、フェスティバルホールの音響は???だな、と思う。ホールは大事だなあ。3階席は流石にすごい高さで足がすくんでしまって、開演前に舞台を覗きこむとなんだか気持ちが悪くて、大丈夫かしら?と思ったのだが、杞憂だった。
まずは一曲目モーツァルトの交響曲29番、ちっちゃな編成なのに、なんてよく響き渡る音。軽やかで優雅ながらとても力強い。細部までクリア。
次はベルクのオーケストラのための3つの小品。すごい大編成でびっくりした。木槌、ハープ2台、たくさんの打楽器、チェレスタ、マーラーみたいだ。あ、そうそう確かウィーンフィルとはコントラバスの配置が逆だった。前奏曲、え、曲始まってるの?みたいな、さまざまな楽器によるラフスケッチのようなメロディから、どんどん盛り上がって、おおこれはゴジラの襲来か!かっこいい!!と思ううちまた静かに。輪舞、冒頭の部分なんかは映像をつけたいような雰囲気、そして行進曲、なんという機能的迫力!!(変な日本語…)、ワクワクしてアドレナリンが出て、もう高さの恐怖は微塵もなく、舞台がすごく近く感じた。これほんとに生で、しかもベルリンフィルで!聴けてよかった〜。
そして休憩ののち、ブラームスの交響曲4番。これはもう、なんていうか徹頭徹尾すごかった。クリムトのあの金色が溢れる音の川となって流れていくような幻影が。身を委ねて浴びるしかない。曲が終わると会場はもう興奮の坩堝。しかし、アンコールはなし。周囲からは「えー、ないんだ」との声も聞こえたが、なしでよかったとも思う。
おそろしく陳腐な例えで申し訳ないけれど、ウィーンフィルが金の美しい飾りがついた王宮の優雅な馬車ならば、ベルリン・フィルはアウトバーンを爆走するベンツみたいだった。柔と剛、伝統と革新。そんな単純な比較はできないんだけれど、共にすごい。
外に出たら、玉藻城公園のライトアップがきれいでありました。
それにしても、音楽は時間の芸術、今聴いているその時だけのもの。ウィーンフィルとベルリンフィルを聴いて、陶然となって家に帰れば、普通の生活が始まる。聴いた私も、演奏者も命は有限。音楽だけが残る。なんだかしみじみとそんな思いが残った一週間だった。
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JUGEMテーマ:音楽
10月に続き11月もフェスティバルホールへ。実は今年、ベルリンフィルが57年ぶりに高松に来る!というので、気合い入れて一番安いチケットを先行でゲット。3階席の一番後ろ、振り向けば壁、という席だがそれでも2万円である。11月のコンサートはこれだけで充分だわ、とウィーンフィルの来日日程なぞ調べもしなかったのだが、事情で行けなくなった知人が空席にしたくないとチケットを譲ってくれて(大感謝〜!)この秋2度目のフェスティバルホールとあいなった。
大阪はプログラムE、前半がサン=サーンスのピアノ協奏曲第2番(ピアノ、ラン・ラン)後半はドヴォルザークの交響曲8番。
前半、サン=サーンスのピアノ協奏曲。華麗に鍵盤の上を走る指、しかし、中盤から強烈な眠気に襲われてしまい(前夜嬉しくて寝付けず)本当にもったいなかった。アンコールはリストの愛の夢第3番。
休憩中、眠気を払うために、以前お医者さんから聞いた脳を騙す作戦を敢行。「今は朝の8時、これから仕事!」と思い込むことにしたら、かなり目が冴えた。気は心?
それにしても、毎回コンサートでは休憩時のトイレ行列が恒例なのだが、今回は列がない!びっくりしてしまった。そういえば、周りを見るといつものコンサートよりも男性率が高い。(ちなみに女性のお着物率もすごく高い)。
で、後半のドヴォルザーク、すんばらしかった〜〜〜。プラハで初演されてから8ヶ月後(!)にウィーン・フィルはハンス・リヒターの指揮でこの曲のウィーン初演をしているとのこと。そのオケの演奏で聴けるのだからなんと幸せなこと。美しく深い味わいの弦の響き、金管、木管楽器の華やかながらなんとも上品な音色、そして力強さ、これぞオーケストラ!オケが一つの楽器になっている感じがした。時折ゾワゾワしながらソヒエフのフレッシュな指揮で、この作品を堪能。
万雷の拍手が鳴り止まず、アンコールはヨハン・シュトラウス「雷鳴と稲妻」と「トリッチ・トラッチ・ポルカ」🎵もう一気にお正月が来た感じで会場の熱気は最高潮。木枯らしなんぞそのの熱い演奏会でありました。
]]>この日は良いお天気で、前日、神戸でアンスネスを聴いたあと大阪へ移動して一泊したので、午前中のんびり歩くことができた。フェスティバルホール、ものすごく久しぶり。周辺に歴史的建物や美しい石の橋があるなんてちっとも知らなかった。
それにしても、フェステバルホール、こんな立派なビルだったっけ?
プログラムA 前半はショスタコーヴィッチ 祝典序曲とピアノ協奏曲第2番(ピアノ・辻井伸行)。
ショスタコーヴィッチは、歯切れ良く引き締まっていい演奏。ピアノ協奏曲も辻井さんのソロがぐいぐいとオケと進む感じがエキサイティング。大きな拍手にこたえて、アンコールは「トロールハウゲンの婚礼の日」。マケラは指揮台に腰をおろして聴いていた。いい雰囲気だなあ。前日のアンスネスに、この日のオスロフィルとノルウエー一色の二日間だったのだけど、北欧の曲はこの一曲だけだったのだよねえ。ちょっとそこだけは個人的に残念。
後半の「英雄の生涯」。休憩時間中からオケメンバーは舞台で入念に練習。マケラが登壇し、オケの方を向いたと思うと瞬時に曲が始まる。R・シュトラウスの幾つかのオペラ、あとオーボエ協奏曲や歌曲は好きなのだけど、これはほとんど聴いたことがない。シュトラウスらしい響き、知ったメロディも出てくるし、演奏もいい。だけど、長い。最後の方は少々集中力が。どうも以前からベルリオーズの幻想交響曲とかもダメで、標題音楽とかいうのが苦手なのかもしれないなあ、ことに長いものは。とほほ、巨大なステーキを消化しきれなかった自分の体力にも問題あり。しかし、弦の深い響きとかゾワゾワしてとっても良かったし演奏を楽しんだ。指揮を終えたマケラも流石に全力出し切った表情。
演奏を聴きに来られていた知己は「なんと(マケラ)若さが爆発しているようだね!これから10年くらい経つ頃どんな風になっているだろうか」とのご感想。とにかくすごい拍手で、会場の盛り上がりはすごかった。アンコールJ.シュトラウス?世の歌劇「騎士パズマン」から「チャルダッシュ」。
えーん、やっぱシベリウス聴きたかったなあ。
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JUGEMテーマ:日記・一般
文化の日、数日前のNHKで短い紹介番組を見て、これは観たい!と徳島八多町の五王神社境内にある犬飼農村舞台での人形浄瑠璃公園に行ってきた。ナビを頼りにみかん畑が広がる細い道をずんずん進む。神社入り口近くの山道が駐車場。神社の階段を登ると舞台がある広場に客席ができていて、すでに「傾城阿波の鳴門」が上演されていた。
テントの受付で名前を書く、無料だが維持のための寄付を心ばかりさせてもらうと、地元のおみかんをくださった(これがとても美味!)
演目のパンフレットを読むとどれも悲劇なのだが、太夫さんの語りや三味線が響き、見事な人形捌きに見惚れる。(人形 勝浦座 太夫・三味線 友和嘉会)
よく晴れて、少しばかりそよぐ風。日の当たるところは暑いかもしれないがちょうど神社の森の木陰となって実に心地よい。極端な気候ばかりのこの頃、忘れかけていた秋の日和の過ごしやすさに心身ともにやすらいだ。
「生写朝顔日記」が終わり、いよいよ番組でも紹介されていた「襖からくり 段返し千畳敷」が始まった。(犬飼農村舞台保存会)
三味線の音に合わせて、手前の大きな襖が勢いよく変化していく。
10名程度で構成された地元の道具役さんが操作をし、引き分け、引き抜き、引き違い、チドリ、田楽、上昇、回転、切り落としなどのカラクリを駆使して130数枚の襖を使って42景を演出。最後に千畳敷が現れると拍手喝采。終了後、中も見せていただくことができた。
本当に素晴らしい見事な景色を堪能。これからも大切に保存されつつ、皆の生活の中に溶け込んだこのいい雰囲気がそのまま残っていきますように。
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午後7時半、居心地の良いルヌガンガ店内に多くの方が集まり、ドリンクを飲みながら待っている、いい雰囲気だ。柴田さんの翻訳された本は一冊くらいしか読んでなくて、それもあまり記憶になくて申し訳ない。ただ、村上春樹さんとの「翻訳夜話」「翻訳夜話2 サリンジャー戦記」がすごく面白かったので今回迷わず申し込みした(私、英語は全くの不得手なので、わかって読んでるんだかどうか怪しいけど)。
朗読会というとえらく静かで緊張するものなのかなと、おっかなびっくり出かけた(この年齢になったらもうちょっと人間がどっしりするのだろう、と思っていたが、性分というのは変わらない)。しかし、冒頭の柴田さんの「讃岐うどんを食べ、仏生山温泉に浸かった」話ですっかり寛いだ雰囲気に。
最初は刊行された『インディアナ、インディアナ』から。静かな詩的な雰囲気が漂う。そして、レアード・ハントの他の作品も(『優しい鬼』から)。文字だけで読んでいるより、抑揚の効いた感情のこもった朗読で聴くと、物語がこんなに生き生きするものかと感じた。まさに「物語」。
レアード・ハントは『インディアナ、インディアナ』を書く時「Beaty and Sadness」という川端康成の言葉を貼っていたそう。
詩といえば、左川ちかさんという方の詩集のことも話されていた。質問コーナーもあり、一つ一つ丁寧に答えてくださっていた。
後半は、だんだん朗読もヒートアップ。ことに最後の、スティーヴン・ミルハウザーの小説から、野球の試合9回裏のサヨナラホームランの実況中継みたいなお話(今調べたら、これですね『ホーム・ラン』)どんどん遠くまで飛んでいくボールの様子を実況中継のプロ以上の臨場感で朗読してくれて、いやあ、ほんとに盛り上がりました。ものすごい体力、気力、集中力!
帰り際『インディアナ、インディアナ』にサインをしていただいた時「すごく楽しかったです」とお礼を。サインのところに書く私の名前について「しんにょうの点は一つ?二つ?」と丁寧に尋ねてくださいました。すごい。ほかほかした気持ちで帰路につきました。
で、つい先日、久しぶりにランチをご一緒した友人が英語に堪能なのを思い出し、ああ、こんなのがあって行ってきたの楽しかった〜、と話したら、なんとお嬢さんが大学で柴田先生に習っておられたとのことで、ものすごくよーくご存知で。話を聞くうち、そ、そんなすごい先生なのねと焦ってしまいました。それだったら彼女をお誘いするんだった。彼女の家、仏生山温泉のすぐそばだったりするのです。
高松にうどんの名店は山ほどあるし、うちの近所にもいい温泉あるし、今度は絶対彼女をお誘いするので、柴田さん、またおいでくださったら嬉しいなあ。
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JUGEMテーマ:音楽
訳あってBillboard Live Oosakaのスケジュールをのぞいていて、吉田美奈子さんのLive(6/23)を見つける。しかも大好物である2台ピアノとの共演!、もう一も二もなくチケットを買ってしまった。
若い頃から矢野顕子、大貫妙子、吉田美奈子の御三方は私のアイドルなのだけど、まだ吉田美奈子さんだけは生で聴いたことがない。山下達郎のコンサートで、大貫妙子、竹内まりや、吉田美奈子がバックコーラス!という、クラクラするような僥倖に浴した遠い日を思いだす。あれから40数年、もう、こちらもあちらもいつどうなりますやら。「生きてるうちに、動けるうちに聴いておこう」がこの頃のチケット「ポチッ」に理由を与え、拍車をかける(笑。
モバイルチケットだし、食事しながらのLiveなんて初めてて、一体何をどう頼んだらいいのかと迷いながらもなんとかチケットを取り、当日を迎えた。入り口で携帯を取り出しうろうろしていると、スタッフさんが「お名前は?」と聞いてくれて、あっさりと入場。万一に備えパスワードだの会員番号だのベタベタ付箋で貼り付けた携帯が気恥ずかしい。食事付きのチケットだったので、フードとドリンクをもらって席へ。なんだかとても大人な空間だわ〜と会場の空気に呑まれつつもアルデンテなショートパスタをぼちぼち食べていたら開演時間になってしまった。
おおおお、生の美奈子さんだ、ピアニストの石井さんは以前Liveで拝聴したことがある、が、ずいぶん痩せられて杖をついての登場で驚く(難病と闘いながら演奏活動に取り組んでおられる由、後で知った)。安田芙充央(ふみお)さんも登場され、まずはプロローグ。石井さんのキラッと粒だった音、安田さんのふくよかであたたかな美しい音、美奈子さんの強靭で表情豊かなソウルフルな声。
美奈子さんならきっと当時(40数年前ね)と変わらないだろうと想像していたけど、ほんとうに思った通り。きっとマイクなんてなくても十分に響き渡る声、ピアニッシモでもね。どれくらい息継ぎなしで声を出し続けられるのだろう、美奈子さん曰く「食べながらリラックスして聴いてくださいね、私と同じ呼吸したらダメよ、倒れます」みたいなことおっしゃってて、猛烈にうなづく。
美奈子さんが『凛』という安田さんと石井さんの2台ピアノによるアルバムを聴いて、これはぜひ一緒にやりたいということで実現したLiveとのこと。いや、ピアノもほんとに素晴らしかった。静謐な曲から轟き渡るような曲までダイナミクスも音色も自由自在。2台で起こる化学変化のような豊かさも加わって、ピアノワールドを堪能。
『凛』にも入っている安田さんの曲『Song of Nenna』に美奈子さんが歌詞をつけて歌われたのが素晴らしかった。あと大好きな『Send in the Clowns』にグッと来た。これは歌う方も聴く方も年齢を重ねてからの方が染みてくる曲だとつくづく思う。アルバム「Monster in Town」から『Town』を安田さんのアレンジで、これは美しく轟くピアノと美奈子さんの圧巻の歌唱で音の坩堝に。大喝采だった。エピローグ、静かに幕を閉じちょっと余韻に浸る。
が、しかし、次のステージもあるので皆さっさと席をたつ。こりゃいかんと、残ったアルデンテパスタをもぐもぐし、ピンクレモネードで流し込んで慌てて席を立った。教訓、料理は一気に食べちゃおう。家に戻ってやっぱ気になって『凛』を購入。とても深い味わいの一枚。
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JUGEMテーマ:音楽
10月はたまたまコンサート強化月間みたいになってしまったのだが、そのラスト、スターマインがクラウス・マケラ指揮のパリ管弦楽団。恥ずかしながらマケラのことは全然知らなくて、たまたま見つけて、お名前をググってみたら大変なお人らしいし、パリ管だし、プログラムが素晴らしい!高額なチケット代に暫し怯むも、B席ならなんとかなるかしら、とぽちっと。
岡山シンフォニーホールは初めて。仕事を終え、歯医者の治療を終え、マリンライナーに飛び乗る。今月はずいぶん瀬戸内海を横断したなあ。岡山駅から路面電車で3駅、歩いても15分くらい、大通りに面したロケーションの良さ。その分面積は狭いが、上にすっくと伸びている。路面電車の駅で広島から聴きにきたというおばさまと話が弾み、ホールまでご一緒した。前から5列目だって、いいなー。おばさまとお別れし、わたしはひたすら階段を登って3階席へ。扉を開けてステージを見下ろすと足がすくんでしまう。た、高い。遠い。しかし、ステージ上の調律の音もハープの音も綺麗に聴こえてくる。いい感じ。
一曲目、ドビュッシーの交響詩「海」でのダイナミックな表情の変化、ほんとに波に揺さぶられているみたい。オーケストラの音の美しいこと。もう音の中にどっぷり浸ってしまった。一曲目からブラボーが(いけないらしいけど、出ちゃうよねえ)。
そして大大大好きなラヴェルの「ピアノ協奏曲ト長調」。ソリストはアリス=沙良・オット。赤い衣装がとてもキュート。ピアノも素敵だし、オーケストラのソリストさんたちの上手いこと。トランペットにはじまって、2楽章のオーボエ初め木管楽器の美しさと歌心。もう涙腺がゆるゆるに。アンコールの曲は何だったんだろう?水面にぽつんと落ちる水滴のような透明感のある音が印象的。
そしてストラヴィンスキーの「火の鳥」全曲版。細かいところまでしっかり練り上げられ、長いけれど全く聴き手を飽きさせない、音による物語。あらゆるところで、はあ〜〜美しいとため息をつきながら、ワクワクドキドキが続く。そして最後の大団円ではもうなんか熱気が渦巻いていてマケラが長い両手を広げてオーケストラをほんとに見えない糸でひとつにしているようで「統(す)べる」っていう言葉がポンと脳裏に浮かんだ。会場中すごいブラボーが飛び交って、楽団員も皆すごい笑顔。いい関係なんだなあと感じた。
アンコールは「悲しいワルツ」。比べてしまって申し訳ないのだけど、福岡でパリ管を聴いた時もアンコールが「悲しいワルツ」だった。はじまった時は、ああ嬉しいと思ったのだけど、途中からいささかショーアップされたものを感じて気持ちが入らなくなってしまった。今回は、ほんとに心からの音楽だった。最後のピアニシモ、弦の音に北国の幽玄さを感じる。最後の音が消えてからもマケラは低く差し出した左手をそのままに。一瞬拍手がパラパラっと出かけたがすぐ静まり、そのまま、一体どれくらいだったろう長い長い静けさが。マケラの左手に皆が魔法にかけられたかのような時間だった。
コンサートで音楽を聴いてこんなに満ち足りた幸福感を味わったのはいつ以来だろうか。マケラは音楽の脈動というのか生命というのかそれをグイッと掴んで取り出せる人だなあと感じた。ひょっとしてほんとに魔法使い?(笑。
コンサート終わっての帰路も、今日も、頭の中には火の鳥が渦巻いていたりする。
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14日は久しぶりの広島へ。せっかく行くからと広響の定期演奏会にも足を運んだ。午前中の仕事を終えJRで広島へ。
広島駅は大々的に工事中。かなり風景が変わっていたが街中はそのまま。路面電車に乗っていると「広響の○○です、次は何々」と広響メンバーのアナウンスが。広響電車、とかサンフレッチェ電車とかあるんだそう。たまたま下野さんのアナウンスで「次は本通り」なんてのも聞けました。
友人とお茶してから演奏会場へ。まずはロシアのアイレン・プリッチンがソロを弾くヴォーン・ウィリアムズの『揚げひばり』(指揮はアルミンク)。大好きなこの曲がお目当てだった。とても繊細で瑞々しい、淡彩画のような揚げひばり。静かな余韻が残る。そしてストラヴィンスキーの『ヴァイオリン協奏曲』さまざまな表情を見せてくれた。この曲、トランペットが良かった。ヴァイオリンと管楽器の掛け合いも楽しい。アンコールはイザイの『無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番〜第1楽章』これが、本当に素晴らしくて心揺さぶられた。
プリッチンはロシアに戻ったら兵役が待っているのだとか。信じられない。こんな素敵な音色を紡ぎ出す手に銃を持たせるのだろうか。無事を祈るのみだ。
後半のフランツ・シュミットの交響曲2番、随所に美しいメロディや管楽器のハーモニーが出てくるのだが、作品が長いので、途中から忙しかった1日の疲労が出てくる、お腹は減る、で曲の大きさに体力がついていかなかった。すごく濃密な世紀末の香。
それにしても、ほんとホールの音響が良くないなあと改めて感じた。今回も直接音の圧が少し辛く感じた。コンサートプログラムのリレーエッセイで広島テレビの社長さんが「最高水準のホールがほしい」「ホールはオーケストラを育てる」と書かれている。これまで転勤で佐世保(アルカス佐世保)や鳥取(とりぎん文化ホール)などで聴いてきたがどちらもとても良いホールだった。せっかくオーケストラがあるのに、なぜ広島に音響のいいホールがないのか。20年前からずっと変わらない。もったいないなあとつくづく思う。
翌日はノルディックサウンド広島で、じっくりとCDを試聴させていただき、購入。音楽や映画の話に花が咲きたくさんエネルギーをもらって帰ってきた。音楽の話ができるってこんな楽しいことだったのか。ようやくコロナの呪縛から解放されつつあるのかな。
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倉敷市民会館なので、岡山より近いのかなーとぼんやり思っていたのだが、マリンライナーで岡山まで行って、また東海道本線に乗り換えるのだとか。他にルートがないか調べていたら、マリンライナーを茶屋町駅で降りて、そこから下電バスで行くのがとても近い。用事を済ませて、うどんを食べてからマリンライナーに乗った。思ったより倉敷に早く着いたので、せっかくだから美観地区や大原美術館を散策。美観地区は観光客がいっぱい。
大原美術館も10数年ぶり。記憶の中にある、あの名画、この名画に会えるとワクワクしたのだが、結構作品が入れ替わっていて、現代アートの大きいのがたくさんになっていて、ちょっと残念。別館も工事中だった。ミュージアムショップで尋ねたら、やはり収蔵品は入れ替えがあるとのこと。
ヤウナ・ムジカのコンサートは、本当に素晴らしかった。以前スウェーデンのスヴァンホルムシンガーズを聴いた時もすごい感動したが、今回、混声合唱は初めてで、ピアニッシモの美しさにため息、ハーモニーの完璧さ、柔らかい響きから力強い表現まで、縦横無尽。花道へ広がって歌うところでは、なんていうかカリヨンの真ん中にいて、あちらこちらから響く音に包まれているようななんともいえない不思議な心地に。たった24人の声とは到底思えないような素晴らしい響きだった。
前半は、リトアニア民謡を編曲したものなど、指揮者のアウグスティナス氏の編曲したものもいくつかあり『3つのリトアニア民謡』はことに素晴らしかった。
後半はバードや、メンデルスゾーン、エルガー、トルミスと来て、エセンヴァルズ作曲『ロング・ロード』、いい曲だったなあ。『スリープ』(ウィテカー作曲)という曲はほんとにすやすや眠れそうな曲だったが、最後、フェイドアウトのところで、しっかり携帯音が鳴り響いた。眠るなって?!(笑。
他にも、曲の途中の盛り上がりでいきなり拍手が巻き起こったりといささかハプニングはあったものの、間宮芳生の合唱曲、そして大中恩の「草原の別れ」(合唱コンクールの課題曲)と続き、アンコールの『瑠璃色の地球』に会場は大盛り上がりだった。やっぱ知っている曲、日本語の曲だと違うのねえ。
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楽しみにしていた たかまつ国際古楽祭メインコンサートに行ってきた。
朝岡聡さん司会、非常に分かりやすく情報や専門的なことを解説してくれてありがたい。
最初は?田芳通さんのリコーダーで、Jacob・van エイクの「笛の楽園」から数曲、ご自身のお話を挟みながら。リコーダーの音がとても明るく響き渡り心地よい。ナイチンゲールでは、鳥の囀りが見事、酔っ払いを描写(?)したという曲なんかも、いかにもって感じで楽しかった。テノールリコーダーの音は尺八みたいだったなあ。エイクはオランダのカリヨン奏者で、こられた人のために教会の中庭でリコーダーを吹いていて、それをまとめたものが「笛の楽園」とのこと。実に多彩な表現が楽しい。
次にテレマンの『ターフェルムジーク」よりリコーダー、2つのフルートと通奏低音のための四重奏曲。リコーダーは、楽章ごとに奏者が(リコーダーも)変わるという趣向。1楽章、4楽章は?田氏、2楽章が大塚照道氏、3楽章は司会の朝岡氏。音色や演奏の違いを楽しむ。広島のコンサート後高松入りする予定のチェンバロのバルト・ナーセンスさんの移動が間に合わず、急遽アンソニー・ロマニウクさんがピンチヒッター。一気に華やいだ雰囲気が醸し出される。なんとも優雅で優しい音色が響く心地よい時間。
休憩は45分あり、その間、ロビーでは、チェンバロ、フラウト・トラヴェルソ、リコーダー、ハーディ・ガーディ、笙による演奏が。ディズニーのナンバーには子供たちも大喜び。しかし、この5つの楽器が一緒に演奏って滅多にないことではないかしら。ハーディ・ガーディ(18世紀のフランス宮廷で女性に好んで演奏された楽器だそう)は初めて拝見。
そして、後半はレ・ヴァン・ロマンティーク・トウキョウの4人の奏者の方(ヒストリカル・オーボエ、三宮正満、ヒストリカル・クラリネット、満江菜穂子、ヒストリカル・ファゴット、村上由紀子、ナチュラル・ホルン、福川伸陽)とアンソニー・ロマニウク氏のフォルテピアノ(18世紀のものを太田垣至氏が修復したもの)によるモーツァルトとベートーヴェンの『ピアノと管楽のための五重奏曲』。
大好きなモーツァルトの曲、その時代の楽器で演奏するとなんともまた味わい深くまろやかな響きで、ほんとにうっとりと聴き入ってしまった。美しい。ベートーヴェンも、実にいい演奏。アンソニーのフォルテ・ピアノは装飾が入ったり即興的要素がいっぱいで、時々レ・ヴァン・ロマンティーク・トウキョウの奏者の人たちもにっこり笑いながらの演奏。その楽しさや伸びやかさがこちらにも伝わってっくる。曲の間にはアンソニーの即興も入り、そこから自然にベートヴェンに移るという趣向。当時はこんな感じも大いにあったのかもしれない。
アンコールでは広島から到着したバルト・ナーセンスさんがフォルテ・ピアノで、ベートーヴェンの「月光」から1楽章を。これが、驚くほど心にしみてうるっときた。現代のピアノで聴くのと全然違う。そしてラストはカニササレアヤコさんの笙の演奏(これがまた透明感溢れて素敵)にアンソニーが即興で彩りを添え、静かに静かに終わる。
皆が帰路につき始めた頃楽屋から拍手が聞こえてきて、思わずにっこり。奏者の方もみんな楽しんだんだろうなあ。
実に盛りだくさんでサービス精神に満ち溢れた楽しい楽しいメイン・コンサート、実に良い時間を過ごさせてもらった。今宵、明日と小豆島でまだまだ祭りは続くのですね。みなさん、お疲れが出ませんように。
ロビーでは、小林大地さん制作『汚名の笛』(当時下手な演奏をした人への罰のため)なんかもあって、これまた恐ろしげな代物だったが、面白かった。演奏する人も大変だったのね〜。
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昨秋は、西山まりえさんのゴシック・ハープ、と 柴田俊幸さんのフラウト・トラヴェルソ、鈴木大介さんのロマンティック・ギターによる演奏会を聴かせてもらった。ゴシック・ハープの響きはすごく魅力的で音がとてもしっかり届くことに驚いた。中世の響きに聴き惚れ、後半の柴田さんと鈴木さんの演奏もとても楽しんだ。
今年も開催されるということで、楽しみにメインのコンサートのチケットは早々に入手したのだが、その後、なんかとっても魅力的なバッハ飯in小豆島とか、直島で開催される島古楽なるものもあることを知り、ううう行ってみたい、と思いつつも、抜けれらぬ予定があり、諦めのため息をつくのだった、とほほ。それにしても、今回のメインの会場は我が家から自転車でも行ける距離にあり、そういう環境で楽しめる音楽祭があるというのが、もうなんていうか嬉しくてしょうがない。
たまたま、ぶらあぼ、をネット上で読んでいたら、柴田さんがインタビュアーをされている「柴田俊幸のCross Talk〜古楽とこの先と〜」という特集もあって、勉強せねばとぼちぼち読ませていただいている。西山まりえさんがゲストの回もあって、昨年、コンサート行く前にこれ読んでおいたら良かったなあ、などと思いつつ。
シギスヴァルト・クイケンへのインタビューもあり、モーツァルトの『コシ・ファン・トゥッテ』に話が及んでいたのを読んで、はたと、老後にゆっくり聴こうと『コシ・ファン・トゥッテ』のCD買ってたなあと思い出し、そろそろ老後かも(って誰が決めるんでしょうね)と引っ張り出したら、他ならぬクイケン指揮、LPBのCDだった。楽しみ♪
『たかまつ国際古楽祭』では、高校生以下を無料招待されるそうで、寄付金を絶賛募集中とのこと。いい音楽に触れられる機会を小さい頃に持てるのは最高の経験だと思う。パート労働者の私も、TシャツとCDをいただけるという素敵なコースに目がくらみ、ほんの少しだけ参加させてもらった。
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友人らとLINEで、せかほし(「世界は欲しいものに溢れている」)のリトアニア雑貨を紹介した回の話で盛り上がっていた時に、一人の人が、小川糸さんの『ミ・ト・ン』を思い出したと勧めてくれて、早速読んだ。
小川糸さんの文章と、平澤まりこさんのすてきなイラストで綴られた北欧バルト三国の一つ、ラトビアの物語。
“ 宝石箱のようにキラキラ輝くラトビアという小さな国で、物語のかけらを拾い集めた。そして
『ミ・ト・ン』という一冊の本が完成した。完成までに、私たちは三回、ラトビアを訪れた。そこで出会ったあの森を風を、光を、湖を、人々の笑顔と優しさを、届けられたらと思っている”
ーーーーー(物語の最後にイラストエッセイとして付けられている文章からの抜粋)
とても自然豊かな国で、その自然と共に慎ましく暮らすラトビアの人々。それは「物」が溢れかえる現代の私たちの世界とは異なる、実に豊かで心優しく、健やかさに満ちた世界だった。森は人々の暮らしに深く関わり、その森の近くで人々は皆幸せに暮らしている。そんな国に生まれた「マリカ」がこの物語の主人公。彼女が生まれた日からその物語は始まる。輝くような幸せと喜びに満ちたその日。マリカは温かい家族に育まれ、元気な女の子に成長する。
マリカの国ではある年齢になると、ミトンを上手に編めるかどうかのテストがある。元気に外を駆け回る方が好きなマリカはミトンを作るのがあまり上手くない。ミトンを上手に作るおばあちゃんの手ほどきを受けてようやく合格したマリカはやがてヤーニスと出会い恋を知り、結婚する。ひたすら互いを大切にし心から愛し合い尊敬しあうヤーニスとマリカ。寡黙ながらも養蜂家として熱心に働くヤーニスとの日々の暮らしを丁寧に紡いでいく。
二人の暮らしは慎ましく、旅に出るようなこともないが、休日には森の中の湖に出かける。魚の様に自在に泳ぐマリカ、そのマリカを優しく見守りながら詩を作るヤーニス。ただ、たくさん子供が欲しいと願っていた二人だが何年たっても子どもは授からなかった。そんなある日、黒と白のつがいのコウノトリが二人の家の庭に巣を作り、卵を産み、雛が孵る。コウノトリをじっと見守る日々は、二人にとっては最上の幸せな時間だった。
しかし、やがて氷の帝国の侵略が始まり、歌うこと踊ること民族衣装を着ることを禁じられ、暗く苦しく辛い時代が始まる。そして、とうとう、愛国者であるという理由だけでヤーニスは氷の帝国に連行されてしまう。マリカにできることは、ヤーニスのために彼を守るために心を込めて世界にたった一つのミトンを編むことだけ。そしてミトンと共に彼を送り出した。必ず帰ってくると信じて。
そして、何年も何年も待ち続ける彼女の元に届いたものは・・・・・・。
まさに宝石の様に美しい物語だった。最初はおとぎ話を読むような気持ちで楽しく読んでいたのだが、だんだん世界は様子を変えていく。氷の帝国の人からマリカに届けられたもの、その荷物を開くくだりでは涙が止まらなかった。今、現在のウクライナ侵攻のことを重ね合わせると、心が張り裂けそうになる。
戦争はごく一部の権力者が始める愚かな行為だ。そこで戦う人一人ひとりに大切な人生があり物語があることをなぜわからないのだろうか。悲惨な状況の中で人々は懸命に日々を生きている、そのことをこの本がしっかり伝えてくれた。ラトビアという国の魅力とともに。
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