二都物語ふたたび 神戸「プラド美術館展」

  • 2018.10.12 Friday
  • 18:16

JUGEMテーマ:アート・デザイン

お誘いいただいて、秋の二都物語パート供∈2鵑禄三人、美術館を巡る旅を楽しむ機会に恵まれました。

一日目は兵庫県立美術館で、プラド美術館展。正直に言うと、それほど興味はなかったのだけれど、ベラスケスはやっぱり良かった。

快晴の道を歩いて美術館へ。

 

一枚目、ベラスケスの描いた「ファンマルティネスホントニェスの肖像」。暗い背景、黒い衣装の深い色の中に浮かび上がるのがその人の顔。人間の内面を描きだすベラスケスの筆の見事さ。

 

芸術、知識、神話、宮廷、風景、静物、宗教の各章の分かれた展示。知識の章では、同じ哲学者を違う画家が描いているのを見比べるのが面白かった。神話では、ベラスケスの描いたなんとも不思議な「軍神マルス」。勇ましい戦いの神様というより、そこらへんのくたびれたおじいさんが、昨夜の深酒を悔やんでいるような疲れたご様子。兜とかが立派なだけにその対比に虚をつかれる。でも、これがベラスケスのすごいところなのかも〜。一度見たら絶対忘れられないマルスです。

 

ルーベンスも登場、かなり大きな絵が続く。宮廷の章では、ベラスケスによる「狩猟服姿のフェリペ4世」や「バリョーカスの少年」。ファン・カレーニョ・デ・ミランダの描く「甲冑姿のカルロス2世」とフェリペ4世はうりざね顔に分厚い唇がとてもよく似ている、そばで鑑賞していたおばさま方から「この人たちはもう血族結婚の嵐やろうねえ、そりゃ似た顔になるわねえ」との声あり。う〜ん、歴史は全く知らないけど、ほんとに似てる。アントニオ・デ・ペレーダの「ジェノヴァ救援」も、細部の描写や質感、色彩の美しさが圧倒的だった。

 

風景の章ではいよいよ「王太子バルタサール・カルロス騎馬像」が登場。カルロス王太子4〜5歳頃の肖像とのこと。あどけないながら風格ある王太子の姿と衣服のきらめき、ブルーが美しい背景とあいまって、すてきだった。この王太子16歳(だったかな)で夭折されたのですね。もう35年近く前に見た「ラス・メニーナス」の感動がすこしよみがえってきた。

デニス・ファン・アルスロート描くところの「ブリュッセルのオメガングもしくは鸚鵡の祝祭・職業組合の行列」は、その名の通り、横幅3828センチの大きな絵の中に、行列とそれを見る人たちがすさまじい数描かれていて、この絵の前は鑑賞者が大混雑(笑。ウォーリーを探せ状態の絵は見れば見るほど面白かった。それぞれの職業組合の旗だろうか。様々な旗を持った人に続いて歩く行列が延々と描かれている。かわいい男の子がおばあちゃんに「一番前の列は60人!」と律儀に報告している声が聞こえた。最前列が一番大きく描かれ奥へ行くほど細密になり、窓から乗り出す人たちにいたっては米粒くらいの大きさだ。何人いるか数えた人がいたらぜひ教えてほしい。

 

そのあとの静物画では、ブドウの細密な描写に圧倒される。もいで食べたら甘い果汁が口に広がりそうなほど。

 

見終えた後は、ほーっとため息。絵を鑑賞するのもなかなか体力が要ります。その日のうちに京都へ移動開始!

『恋に落ちたシェイクスピア』

  • 2018.10.02 Tuesday
  • 21:17

まずは映画の再鑑賞。この映画『恋に落ちたシェイクスピア』は、確かDVDでみてすごく良い映画だったという記憶が残っていた。あるきっかけからあらためて観ることに。スピード感あふれる冒頭のシーンから、すぐさま物語の中へ引き込まれてしまった。このスピード感と躍動感が最後まで続き、ずっとドキドキわくわく。ジョン・マッデン監督、1998年の作品。アカデミー賞作品賞はじめ、様々な賞を獲っている。いやはや20年も前だったのか〜。

 

スランプに陥り創作に苦しむ劇作家シェイクスピアと、演劇と詩をこよなく愛する美しい深窓の令嬢ヴァイオラの短くて激しい恋の物語。と言葉にしてみるとなんだか‘くさい’のだが、二人が恋に落ちていく様は、ほんとに躍動感にあふれていてみずみずしい。グゥイネス・バルトロウ演じるヴァイオラの透明感のある美しさ!男装してトマス・ケントとなるときも、とてもチャーミングだ。

そして、この恋に触発されてシェイクスピアの筆は冴えにさえ「ロミオとジュリエット」が生まれ、初演にこぎつける。それは同時に恋の終わりでもある。現実の恋と、劇中の恋が螺旋階段のように絡み合いながら疾走していくにつれ、観ているこちらの切なさのスピードもどんどんあがるわけで。映像の美しさもあいまって、すっかりシェイクスピアの時代の世界にはまりこんでしまう。

豪華な俳優陣の達者な演技もすばらしい。ヘンズローを演じるジェフリー・ラッシュ(この人見ると、なんとなく橋爪功さんを思い出す)、ヴァイオラの婚約者の怒りっぽいけど、ちょっととんまなウェセックス卿を演じるコリン・ファースも憎めない感じがとてもいいし、      ベン・アフレックやルパート・エヴァレットといった私好みの役者さんたちもすてきだし。

 

しかしなんといっても、ジュディ・デンチ演じるエリザベス女王は圧巻〜〜〜!物事を見通す力、見事な采配、存在感そのものがすごくて、最後のシーンでも忘れられない印象を残す。そしてもう一人、ヴァイオラの乳母を演じるイメルダ・スタウントン、この人がまたチャーミング。シェイクスピアがお嬢様のところへ忍んで来ているのに気付いたとき、扉の前に椅子を置いて夜通し見張り役をするところなんか、ほんとに楽しい。コメディの要素も満点で笑ったり泣いたり切なくなったりしながら、あっという間に見終えてしまった。

 

「ロミオとジュリエット」の初演のあと、切ない恋心を抱きながらも新天地へと向かうヴァイオラ、そしてヴァイオラを思いながら次作の十二夜を書き始めるシェイクスピア。

薔薇の花でいえば七分咲きの美しさ、みずみずしさと甘やかさに彩られたすてきな映画だった。

 

劇中、シェイクスピアがヴァイオラにソネットを捧げる美しいシーンが。あの有名な18番のソネットだ。さっそく本棚からソネット集や、アンソロジーをごそごそと探し出して読んでみた。映画の余韻のせいかぎゅっと胸が締めつけられる。再鑑賞、よいものですね。

 

 君を夏の日にたとえようか。

 いや、君のほうがずっと美しく、おだやかだ。

 荒々しい風は五月のいじらしい蕾をいじめるし、

 なによりも夏はあまりにもあっけなく去っていく。

 時に天なる瞳はあまりに暑く輝き、

 かと思うとその黄金の顔はしばしば曇る。

 どんなに美しいものもいつかその美をはぎ取られるのが宿命、

 偶然によるか、自然の摂理によるかの違いはあっても。

 でも、君の永遠の夏を色あせたりはさせない、

 もちろん君の美しさはいつまでも君のものだ、

 まして死神に君がその影の中でさまよっているなんて

 自慢話をさせてたまるか、

 永遠の詩の中で君は時そのものへと熟しているのだから。

  ひとが息をし、目がものを見るかぎり、

  この詩は生き、君にいのちを与えつづける。

                 (戸城宏之 訳)

鮫ではなく、サバだった?

  • 2018.10.01 Monday
  • 22:18

世の中は未知のものであふれている。まだ読んだことのない本、観たことのないもの、行ったことのない土地、知らない文化。それを思うとソワソワしてしまう性格ゆえ、一度読んだ本や映画なんかはよほどのことがない限り、それきりになってしまう。本を読むのもそれほど早くないし、時間が有り余っているわけでもない。

 

そういう性格の私を大昔ある女性が「○○さんは、鮫みたいね、鮫って泳いでないと死ぬらしいわよ」とおっしゃった。それ以来、私は鮫、なのである。そう思い込んでいた。好奇心の赴くまま「鮫しま〜す」と泳いできた(このごろはちょっと失速中)。しかし。

 

先日カンボジアの監督として初采配をしたあとの本田選手のインタビューで「僕は回遊魚だから止まらない」といったようなフレーズが出てきた。スケール感は、象とありんこくらいに違うが、お仲間だわ〜と嬉しくなったのも束の間、ん?回遊魚も止まると死ぬの?なぜ鮫じゃないの?という疑問がふつふつと沸いてくる。

 

たまたまその時に、近くに海洋生物のスペシャリストがおられたのでその疑問をぶつけたら、鮫の中でも外洋を泳ぐ種類は止まると死ぬらしいが、あてはまらない鮫もいるらしい。進化がどうのとかいろいろ詳細に説明してくれたが、その部分はよくわからなかったので(;^_^A端折ります。で、回遊魚ってどんな魚を言うんですか?と尋ねたら「サバとか、カツオとか、マグロとかですかね」とのこと。

 

えええ?じゃあ「鮫しま〜す」は正しくは「サバしま〜す」とか「カツオしま〜す」と言われねばならなかったのか。いい出汁とれそうだけど、語感が今いちだなあ、とほほ。

 

とりあえず「回遊魚しま〜す」と言い換えてみようか。が、しかし回遊魚でも止まったら死ぬ(鰓を自分で動かせない種類)ものと、そうでないものといるらしい。どこまでも正確を期そうとすると、なかなか厄介かも(;^_^A

 

まあ、そんな、ある種の鮫ならびにある種の回遊魚的な私がこのごろ、珍しく再読、再鑑賞をした本や映画のお話は、また、次回。

JUGEMテーマ:日記・一般

 

『生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。』

  • 2018.09.11 Tuesday
  • 22:18

JUGEMテーマ:アート・デザイン

恵比寿から、帰路に着くために東京駅へ。そこで『生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。』を見ました。移動の必要がないので、新幹線に乗るまでの少ない時間でも鑑賞ができるのがありがたい。ステーションギャラリー、初めてでした。

 

いわさきちひろというと、きれいな淡い色合いの花やこどものかわいさ、という印象でしたが、どこかでその生涯にはたくさんの困難もあったということを聞いたことがあり興味を惹かれました。

 

丹念に絵描きいわさきちひろの生涯を追ったすてきな展覧会で、彼女の生涯と作品制作の様子や苦悩までボリュームたっぷり。

 

恵まれた少女時代、とても自由で先進的な教育を受けた女学校時代。その後のつらい戦争の時代。戦後、共産党員として活動し同じ党員の夫と出会い結婚してから。どんなときも生涯に渡って絵を描き続けていた彼女。

 

とても器用だったちひろが、自身で縫ったワンピースや、海外から家族に宛てた絵葉書や、愛用の品物も展示されていました。びっくりしたのは左利きだったということ、初めて知りました。

 

数年、環境的に絵が描けない時期に、藤原行成流の仮名文字を習ったそうで、それは右手で書いたそうです。それもわずか数年で先生の代わりをするほどの腕前。やはり何をやってもすごい人だったのですね。彼女が絵を描き、そこにかな文字で文章をしたためた手紙の展示には舌を巻きました。繊細で優美なかな文字の美しさといったら。羨望がうずまきます(笑。

 

そして、ちひろ自身も大好きだったアンデルセンの挿絵の「マッチ売りの少女」と「赤い靴」に胸を打たれました。アンデルセンの物語世界の核心を絵にして取り出したような力のある絵でした。ちひろがとてもアンデルセン童話を愛していたのが伝わってくるようでした。

 

新しい技法や、テーマなど様々な模索を続けながら描き続けたちひろの人生、すてきです。

 

それにしても、画家の一生を追った展覧会というのはほんとに面白い。最近では絵本画家の林明子、ムーミンの作者トーベ・ヤンソン、そしていわさきちひろ。そこには何か共通の創作に対するひたむきな強さを感じ、深い尊敬の念が湧いてきます。創作というのは喜びであるとともに、途方もなく苦しくて孤独な闘いでもあるんだろうなあ。

 

まだまだじっくり見たかったのですが、新幹線は待ってくれません。お土産も買わねばなりません。巨大な東京駅で迷ったら大変です。赤レンガと最新設備がうまく調和したステーションギャラリーをあとに帰路についたのでした。

 

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