七夕

  • 2007.07.11 Wednesday
  • 22:57
菅原克己全詩集
菅原克己全詩集

今年は7が三つ並びの七夕でしたね。携帯に並んだ「070707」が美しかった(笑。以前もちょこっと書きましたが、毎年七夕になると、菅原克己の詩『ブラザー軒』を読みたくなります。ちょいと長いですが。

     『ブラザー軒』

    東一番丁、
    ブラザー軒。
    硝子簾がキラキラ波うち、
    あたりいちめん氷を噛む音。
    死んだおやじが入ってくる。
    死んだ妹つれて
    氷水喰べに、
    ぼくのわきへ。
    色あせたメリンスの着物。
    おできいっぱいつけた妹。
    ミルクセーキの音に、
    びっくりしながら
    細い脛だして
    椅子にずり上がる。
    外は濃藍色のたなばたの夜。
    肥ったおやじは
    小さい妹をながめ、
    満足気に氷を噛み、
    ひげを拭く。
    妹は匙ですくう
    白い氷のかけら。
    ぼくも噛む。
    白い氷のかけら。
    ふたりには声がない。
    ふたりにはぼくが見えない。
    おやじはひげを拭く。
    妹は氷をこぼす。
    簾はキラキラ、
    風鈴の音、
    あたりいちめん氷を噛む音。
    死者ふたり、
    つれだって帰る、
    ぼくの前を。
    小さい妹がさきに立ち、
    おやじはゆったりと。
    東一番丁、
    ブラザー軒。
    たなばたの夜。
    キラキラ波うつ
    硝子簾の向うの闇に。


どこまでも透明で幻想的な、たなばたの夜。静かに氷を噛む音がいつのまにか部屋いっぱいに満ちてくるような。

28年ほど前(年ばれちゃうけど)高校の軽音楽部でMeditationというバンドのキーボードをやってました。そのバンドの文化祭での演奏をメンバーのお一人がきれいにリマスターしてCDに納めてくれたものを最近いただき、ほんと懐かしさのあまりひっくり返りそうになりました。失敗した記憶が鮮明なのでこわごわ再生したのですが、想像以上に演奏も音質もよく、聴いているとつい昨日のことのように思えるほどでした。実際には長い長い時間が流れてしまったわけですが。

学年がひとつ上だった女性メンバー3人が抜けた次の年の文化祭の演奏もはいっていて、そこでキーボードとヴォーカルを担当していたMくんの声を28年ぶりに聴いていたところへ、CDを作ってくれた友人から届いたのが、そのMくんが昨年亡くなっていたという知らせ。ほんとに驚きました。

違うバンドだったのであまり話した記憶はないのですが、いつもにこにこしているやさしい雰囲気の人だったなぁ。当時、わたしが学校の冊子か何かに書いた「新しい時代のしっかりした風に」という(タイトルしか覚えてない^^;)文章を「とてもよかったですよ」と言ってくれたときの記憶が蘇ってきました。

遺されたご家族のことを思うとなんともいえない気持ちだったのですが、この詩を読みながら、硝子簾をくぐった彼が子どもたちと並んで氷水を喰べているところを想像していると、すこし気持ちが静かになりました。彦星と織姫も、死者と生者も、天の河を自由に往来して逢瀬を楽しめる七夕だったらすてきだなぁ、と思いつつ。

ブラザー軒のある街、仙台の七夕は8月なんですねぇ。一度行ってみたい街ではあります。

豆腐

  • 2006.08.24 Thursday
  • 21:38
先日、豆腐が一丁10円!というのでたくさんせしめてきました(笑。豆腐ハンバーグ、麻婆豆腐、ゴーヤチャンプルー、冷奴、豆腐サラダ。姿形が変われば結構あきないもんです(^^;)。でも、豆腐は10円でもサラダ用のレタスが一個300円もしちゃあねぇ(笑。

その白い豆腐を眺めていたら、ふと祖母の言葉を思い出しました。「あっちゃん、色でいうたら‘白’みたいな人間になりなさい。黒はどの色を混ぜてもその色を打ち消していまうけど、白は柔らかい色にしてくれるから」。まだ4歳くらいだったと思うんですが、なぜかよく覚えてます。絵を習っていたようなので、そんな話しになったのかもしれませんね。ほどなく他界してしまったので、鮮明に覚えている祖母の言葉というと、これくらいかもしれません。

今、この年になると、自分を見失わない揺るぎない黒も、とても魅力的に感じるのですが。さて今の自分はどうなんでしょうね。白だか黒だかわかんないグレイ人間のように思えます。でも、よく考えたら、白っていうのも黒と同じくらい孤高の色かもしれませんね。

あ、話しが逸れました。豆腐ですよ、豆腐(^^;)。

新秋の記     木下夕爾

台所の片隅から吹いてくる
あの風ももう秋だ
白い皿の
新豆腐のようにおどろきやすいこころよ

裏の林にきて
しばらく夕焼をながめている
川瀬の音
秋風の音

子どものために
わくら葉ひろってふところにする
わくら葉にも美しい夕焼がある

もう走り穂がかぞえられ
みちばたにこぼれ生えの刀豆(なたまめ)も
青い莢(さや)を垂れている
一列にうす紅い実がならんでいる

この詩をはじめてよんだとき‘新豆腐のようにおどろきやすいこころ’というフレーズにはっとしたのを鮮烈に覚えてます。お皿の上のふるえるように白い豆腐。そんなこころをもちつづけていられたら。透明感のある白と紅の対比も美しいです。

それにしても、夏の疲れもそろそろピーク・・・・・・早く、秋の風感じたいなー。

緑色わたしの好きな緑色。

  • 2004.06.18 Friday
  • 18:35
緑の風、緑の枝よ。
海の上には船。
山の中には馬。
腰には影をおき、
娘は欄干で夢をみる。(会田由訳)

ロルカの「夢遊病者のロマンセ」。
ピアニストとしても優れていたロルカの詩。「意味はわからずとも原詩を音読するほうがよい」と訳者がすすめるくらいだから、言葉自体が美しく音楽的なんだろうなあ。ふむふむ。「ヴェルデ キ テ クェロ ヴェルデ・・?」とあてずっぽうで音読を試みる。アンダルシアのにおい、する?
この物語詩は最後に恋人たちが二人とも死に至る暗い内容だけど(オペラチックですにゃ)この「緑」(ヴェルデ)を使ったリフレイン、効果的だ。

なんでこの詩を思い出したかというと、時たまぼーっとしに行く街はずれの丘で、この前ちょっと信じられないほど美しい緑を見たから。
すでに新緑ではない、けれどもまだ深緑になってはいない。夕暮れで光がやわらいだせいもあってか、それはそれは瑞々しい緑だった。人生でいえば、青春の迷いを終えて、充実した壮年期にはいる一歩手前っていう感じかな。
ロルカもだけど、シューベルト、クーラ、バタワース(ほかたくさん)みーんな、こんな輝かしい時期に人生を終えてしまったんだなあ〜と、しみじみする。

久しぶりにクーラの「無言歌(Chanson sans paroles)」を聴く。いつだったか、この曲を聴いたとき、その場に居合わせたみんなが一斉にため息ついたっけ。憂いをふくんだ旋律の美しさがしみてくる。北欧ものを聴き始めたころ、ほんとによく聴いていたな〜(「トイヴォ・クーラ室内楽作品全集機MILS 9335)。
本日は、ちょっとおセンチ(死語)でした、笑。

『アパラチアの春〜とハート・クレイン』

  • 2004.05.04 Tuesday
  • 13:33
コープランドの「アパラチアの春」のタイトルは、ハート・クレインという詩人の詩からとられたものだという話を教えてもらった。興味をそそられて調べてみると、コープランドにこの曲を依頼した舞踊家マーサ・グレアムが、クレインの詩から引用してつけたタイトルだということまでは、あちこちに書いてある。しかし、どの詩からの引用かまでは書かれていない。

どうしても気になって、ネットであれこれ調べていくうち、懐かしい古書店サイトの検索結果がひっかかって来た。

数年前、徳山(現在の周南市)の駅前で友人を待つ間、商店街をうろうろしていた時に見付けた店でマツノ古書店という。道をひょいと入ったところにあった店にふらっと入り、その品揃えの良さに驚いた。音楽之友社の作曲家別ライブラリーが、ほとんど全部揃っていたりする。こういった本、なかなか高価で手が出ない(^^;)。大喜びで「北欧の巨匠」の巻を買ったのを懐かしく思い出す。

その後、同じ徳山で画廊をされているN氏(北欧音楽と深い関わりをお持ちの方だ)も、あの店はいい店ですよ、と言われていた。

その本屋に『ハート・クレインの「橋」研究』という本があるという。著者は広島の大学の先生だ。なんだか、不思議な縁を感じ、さっそく注文する。

数日して届いた本を開く。ネットで「アパラチアの春」の題名の元は“The Dance”という詩らしい所までわかっていたので、届いた本の中にその詩を見付けてわくわくする。「橋」は本一冊分ある、長い長い叙事詩だけど、あった〜“O Appalachian Spring!”という一節が。ただ、それだけの事なんだけどね(笑)。なんだか智恵の輪が外れた時みたいに、嬉しかった。

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